Contents
近年、フィリピンは東南アジアの中でも注目度の高い新興市場として、世界中の企業や起業家から熱い視線を集めています。かつては「発展途上国」というイメージが強かったフィリピンですが、ここ数年で社会インフラが整備され、インターネット環境や金融サービスも急速に進化。**「英語が通じる人口1億人市場」**として、その存在感を増しています。
フィリピン経済は近年、年平均5〜7%の高い成長率を維持しており、特にサービス業・IT・観光・建設などを中心に活況を呈しています。2025年時点で、ASEAN諸国の中でも堅調な消費マインドと若年層の購買力が支える形で、都市部を中心に中間層が拡大しています。これは、BtoCビジネスを行う上で大きなチャンスです。
もう一つの大きな強みが人口構造です。フィリピンの平均年齢は24〜25歳前後と非常に若く、労働人口が豊富で、今後数十年はこの「人口ボーナス」が続くと予測されています。特に教育水準の高い都市部では、大学卒業レベルの英語スピーカーを比較的安価で雇用できるというメリットもあり、スタートアップや中小企業にとって大きなアドバンテージとなります。
IT業界やカスタマーサポート、教育業、デジタルマーケティングなど、英語を活かす分野では現地の若い人材が即戦力として活躍できる環境が整っています。
フィリピンは長年にわたりアメリカや日本などとの深い経済的・文化的交流があり、外国人に対する偏見や排他性が少ない国としても知られています。特にセブやマニラといった都市部では、外国人が経営するレストランや英語学校、IT企業なども多く、「外国人がいることが当たり前」のような雰囲気があります。
英語でのビジネスが可能であることに加え、現地スタッフとのコミュニケーションが比較的スムーズであることから、フィリピンは「海外起業初心者」にもハードルが低い国と言えるでしょう。
フィリピンでは、人件費や家賃などの固定コストが比較的安価であるため、少額の資本でビジネスを始めやすいのも特徴です。また、競争が過熱していない分野もまだまだ多く、日本や先進国では難しいビジネスモデルも通用する可能性があるのが魅力です。
このように、フィリピンでの起業には「成長性」「人材」「文化的寛容性」という3つの大きな魅力があります。ただし、制度上の制限や現地慣習を正しく理解しなければ、成功は難しいのも事実です。
本記事では、こうした背景をふまえたうえで、外国人がフィリピンで合法的に起業するためのステップを順を追って解説していきます。
フィリピンで起業する際に、最初に理解しておくべきなのが「外国人の出資制限」です。日本人を含む外国人が現地法人を設立し、ビジネスを展開する場合、その業種によっては出資比率に制限がかかるため、事前の確認が必須です。
フィリピン政府は「Foreign Investment Negative List(FINL/ネガティブリスト)」という形で、外国人が100%出資できない業種を明確に定めています。このリストに該当するビジネスでは、外国人は最大40%までの出資しか許可されていません。
代表的な「制限対象業種」は以下の通りです:
小売業(例外あり)
飲食業(例外あり)
サービス業(特定条件を満たさない限り)
マッサージやエステ、教育など、国内向けサービス
つまり、たとえばセブ島で「カフェ」や「語学学校」を開業したい場合、フィリピン人名義の法人にする必要があり、実質的には名義を借りる(Nominee)形で運営されることも少なくありません。
一方で、条件を満たせば外国人が100%出資して設立可能なビジネスも存在します。代表的なものが以下の2つです。
製造業などで売上の60%以上を海外からの輸出で構成している企業は、外国人100%出資が認められます。対象は工場やITアウトソーシング、製品加工業など。
「Philippine Economic Zone Authority(PEZA/フィリピン経済区庁)」が管理する経済特区に入居した法人も、条件を満たせば外資100%出資が可能です。
PEZAは、フィリピン政府が外国資本の誘致を目的に設けた特別機関で、一定の要件を満たす企業に対して以下のような優遇措置を提供しています:
法人税の免除(最大4年〜6年間)
輸入関税の免除
外国人100%出資の許可
外資の利益送金の自由化
PEZA指定のエリア(経済特区)にオフィスを構える必要がありますが、IT企業やBPO(Business Process Outsourcing/業務委託)企業の多くはマニラやセブのITパーク内にあるPEZAビルに入居し、外資100%法人を運営しています。
特に英語力を活かしたオンラインサービス型ビジネスやテック系スタートアップなどは、PEZA法人としての登録を目指すことで、法的にも税制面でも大きなメリットを得られる可能性があります。
外国人が出資比率40%を超える場合、**最低資本金として20万ドル(約1,100万円以上)**の投入が求められます(例外あり)。
たとえば、オンラインサービス業であっても、現地向けビジネスであれば出資制限の対象となるため注意が必要です。
一方、フィリピン人60%/外国人40%以下の構成にすれば、資本金5,000〜10,000ペソ程度の登記も可能です。ただし、この場合も実質的なコントロールは持ちづらくなります。
フィリピンでの起業は、「どんな業種か?」「誰に向けてサービスを提供するのか?」によって、設立形態が大きく異なります。PEZAを活用すれば外資100%法人も現実的ですが、飲食や小売のようなローカル向け事業を考えている場合は、フィリピン人との共同出資または名義借りが前提になることを理解しておく必要があります。
次のステップでは、実際の法人設立の流れと必要書類について詳しく解説します。
フィリピンでの起業において、アイデアや資金と並んで重要なのが「法人設立の手続き」です。特に外国人が関与する法人の場合、手続きを正しく踏まなければ、営業許可が下りず、銀行口座すら開けません。
ここでは、一般的なローカル法人(Domestic Corporation)の設立手順と、関連機関の役割・書類について詳しく解説します。
社名の予約(SEC)
定款の作成・公証
資本金の払い込み(銀行口座の仮開設)
法人登記(SEC登録)
BIR登録(納税者登録番号の取得)
Mayor’s Permit(営業許可証)の取得
SSS・PhilHealth・Pag-IBIGへの登録
SECは、フィリピン証券取引委員会のことで、日本で言えば法務局と金融庁の役割を兼ねたような存在です。法人登記、株式関連の規制監督、証券取引に関する監督などを担っており、すべての法人はまずSECへの登録が必要となります。
SECに提出する主な書類は以下の通り:
社名予約証明書(Name Verification Slip)
定款(Articles of Incorporation)
内規(By-laws)
株主情報(Treasurer’s Affidavitなど)
登録完了後、**SEC登録証(Certificate of Incorporation)**が発行され、晴れて法人が誕生します。
SEC登録の前に、仮口座を開設して資本金を払い込む必要があります。外国人出資比率が高い場合は、先述の通り20万ドル以上の資本金が求められることも。
フィリピンの銀行では、「SEC登録前でも資本金預け入れ専用の仮口座(for incorporation)」を開設できる仕組みがあります。SEC登録完了後に正式な法人口座へ切り替えます。
BIRはフィリピンの国税庁にあたる機関で、**納税者登録番号(TIN)**の取得と、**公式領収書の認可(OR / Official Receipt)**を担当します。
法人が営業を開始するには、必ずBIRに登録して:
TIN(Taxpayer Identification Number)取得
領収書の印刷許可申請(Authority to Print)
会計帳簿の登録
VAT登録(場合による)
これらを済ませなければ、合法的に売上を上げることができません。
「Mayor’s Permit」は日本で言う営業許可証にあたり、ビジネスの所在地の市役所(City Hall)から取得します。オフィスや店舗の立地によって担当官庁が異なり、申請に数日〜数週間かかる場合もあります。
提出書類例:
SEC登録証
BIR登録証
賃貸契約書(Lease of Contract)
消防署・衛生局の承認証明(Fire Safety, Sanitary Permit)
フィリピンで法人を設立し、一人でも現地スタッフを雇用する場合、以下の3つの政府機関への登録と拠出が法律で義務付けられています。登録を怠ると、罰則の対象になったり、ビジネス許可の更新が拒否されることもあるため、必ず対応が必要です。
SSSは、フィリピンにおける公的年金制度です。日本の厚生年金に近く、従業員の退職後の生活資金や疾病・失業時の給付、死亡時の保険給付などを目的としています。
企業と従業員の両者が拠出
月給に応じて拠出額が決まる(上限あり)
登録後、毎月オンラインで報告・納付
SSSに加入していないと、従業員は将来的な給付を受けられないだけでなく、企業側にも未登録による罰金や営業停止命令が下されるリスクがあります。
PhilHealthは国営の医療保険制度で、フィリピン国内の病院で入院や手術を行う際、一定の補助が受けられる仕組みです。
従業員の医療保障制度
掛金は月給に比例し、企業と従業員で分担
保険証の提示により公的病院での医療費の一部が免除・減額される
特に低〜中所得層にとっては医療費の負担軽減に直結する重要な制度であり、企業側の信頼にも関わってきます。
Pag-IBIGは、フィリピン政府が運営する住宅取得支援ファンドで、従業員が将来的に住宅ローンを利用する際に活用されます。名前の「Pag-IBIG」は愛を意味する言葉ではなく、**Pagtutulungan sa Kinabukasan: Ikaw, Bangko, Industriya at Gobyerno(未来のための協力:あなた・銀行・産業・政府)**の略語です。
拠出額は月給の1〜2%程度
勤続年数に応じた住宅ローン申請が可能
企業側も従業員と同額を拠出
単なる住宅支援だけでなく、勤労者の福利厚生・安定的な生活支援制度として企業の社会的責任の一部とされています。
法人としてこれら3機関への登録を行ったあとは、毎月の給与計算時に各拠出額を計算・控除し、企業負担分と合わせて納付する必要があります。
また、各機関は定期的なオンライン報告と更新を求めてくるため、人事・会計処理を担うスタッフの配置またはアウトソーシングの検討も重要です。
法人設立には、数多くの手続きと機関のやり取りが必要です。
特に外国人が関与する場合は、通常よりも慎重な審査が行われ、設立完了までに1〜2ヶ月かかるのが一般的です。
手続きをスムーズに進めるには:
経験のある弁護士やコンサルタントのサポートを受ける
パートナーとの連携を密に取る
全書類を英語で二重確認する
ことが重要です。
次のステップでは、法人設立後に必要な「ビザや在留資格の取得方法」について詳しく紹介していきます。
フィリピンで会社を設立しても、外国人自身がフィリピンに合法的に中長期滞在できなければ、実際の運営は困難です。観光ビザのままでは銀行口座の開設や不動産契約にも制限があり、ビジネス活動を本格的に行うには**適切なビザ(在留資格)**を取得する必要があります。
ここでは、フィリピンで起業・ビジネス運営を考える外国人向けの主なビザ種類を詳しく解説します。
フィリピン人と結婚している外国人が取得できる永住権に相当するビザです。フィリピンで最も強力な在留資格の一つで、就労・居住・事業運営がすべて可能です。
フィリピン人配偶者がいることが条件
初回は「仮永住(1年間)」として発給、その後「正式永住」に更新可能
就労制限なし、法人登記も自名義で可能
有効期限は基本的に無期限(定期的な更新あり)
ビジネス運営の自由度が高く、安定してフィリピンに居住したい人にとっては理想的なビザです。
フィリピンで事業を行う法人が、自社の外国人スタッフ(=自分自身を含む)を雇用する形で申請する就労ビザです。起業家が自身を「会社の役員またはマネージャー」として申請するケースも多く見られます。
フィリピン国内法人がスポンサー(雇用主)となる必要がある
DOJとBureau of Immigrationの審査あり
手続きに約2〜3ヶ月かかることも
1〜3年有効で更新可能
配偶者・子供に対しては付帯ビザ(13D)取得可
法人登記後に取得することが一般的で、フィリピンで中期的に滞在・活動したい場合に現実的な選択肢です。
退職者向けとされているSRRVですが、実際には一定の条件を満たせば「ビジネス目的」でも取得が可能です。2024年以降は条件が厳格化され、特に年齢要件が以下のように変更されました。
50歳以上が対象(2023年以前は35歳以上で取得可能だった)
無犯罪証明、健康診断書が必要
預託金10,000〜50,000USDを指定銀行に預ける(ビザ種別による)
就労不可だが、法人役員や事業主としての活動は可能
SRRVは一度取得すれば**ほぼ無期限で滞在可能(更新料は年次)**という点で非常に人気があり、観光ビザや9Gのように定期的な出国・更新が不要という点も魅力です。
最も手軽な滞在方法として、「観光ビザの延長を繰り返しながら法人名義人にはフィリピン人を立てる」という運用もあります。
フィリピン入国時に最大30日間の観光ビザ(無料)
最大36ヶ月(3年)まで延長可能(毎月または2ヶ月単位で手続き)
法人登記はフィリピン人名義(外国人は実質的経営者として裏方)
実務上は多くの飲食店やスモールビジネスで採用されている方式
ただしこれはあくまで法的にはグレーゾーンであり、入管に不審を持たれると罰則や強制送還の可能性もあるため、あくまで短期的な手段と捉えるべきです。
ビザ種別 | 特徴 | ビジネス活動 | 年齢制限 | 安定性 |
---|---|---|---|---|
13A(配偶者) | 永住権相当・自由度高い | ◎ | フィリピン人配偶者必須 | ★★★★★ |
9G(就労) | 法人経由で取得 | ◎(役員・社員として) | 制限なし | ★★★★☆ |
SRRV(退職者) | 預託金必要・年齢制限あり | △(就労不可・経営可) | 50歳以上 | ★★★★★ |
観光ビザ延長 | 手軽だが不安定 | △(実質経営のみ) | 制限なし | ★★☆☆☆ |
どのビザを選ぶかによって、あなたの滞在の安定性・ビジネスの自由度・家族帯同の可否が大きく変わります。最初は観光ビザで市場調査を行い、ビジネスの立ち上げと並行して13Aや9Gへの切り替えを検討するのが現実的なケースも多いです。
次のステップでは、**「信頼できる現地パートナーとの契約」や「名義人リスクの回避方法」**について解説していきます。
フィリピンでビジネスを始めるにあたって、多くの外国人起業家がつまずくポイント――
それが、「名義人(Nominee)やパートナーとのトラブル」です。
先述の通り、外資規制により一部の業種ではフィリピン人名義で会社を登記する必要があるため、信頼できるパートナーや代理人の存在が不可欠です。そして、このパートナー選び以上に重要なのが、「契約書の整備と、法的な後ろ盾としての弁護士の存在」です。
日本の弁護士と比べて、フィリピンの弁護士(Attorney at Law)ははるかに実務的で、影響力が大きい存在です。
特に起業・不動産・労務といった分野では、弁護士が持つ力は次のように表れます:
会社設立における定款の作成・修正の最終決定権
名義人と実質経営者(外国人)との間の契約書作成と公証
トラブル時の仲裁・裁判対応だけでなく、事前予防策の立案
役所・税務署・市役所との交渉・同行・口利き的サポート
つまり、弁護士が味方につけば非常に心強く、逆に敵に回すと何もできないというのが現地ビジネスのリアルです。
たとえば、あなたがカフェや英語学校を起業する場合、会社名義はフィリピン人パートナーにする必要があります。その際、実際の出資額・収益配分・撤退時の権利などを明文化した契約書(MOA:Memorandum of Agreement)を、必ず**弁護士に作成させ、公証(Notarization)**しておく必要があります。
重要なのは以下のポイントです:
株式の実質的所有割合(実態ベース)
事業運営の決定権の所在
営業権の譲渡・売却のルール
出資金の返還条件
解散時の資産配分
契約が曖昧なまま事業をスタートすると、名義人に裏切られて全資産を奪われるといったケースも現実に発生しています。
ここで強調しておきたいのが、**フィリピンで“本当に信頼できる弁護士を見つけるのは簡単ではない”**という現実です。
弁護士というと「法律の専門家であり正義の味方」というイメージを抱くかもしれませんが、フィリピンでは“外国人をカモにする弁護士”が少なからず存在します。特に起業・不動産・パートナー契約といった金銭の絡む場面では、顧客の無知や情報不足を逆手に取る弁護士がいることも事実です。
たとえば:
高額な着手金を取ったまま仕事を進めない
フィリピン人パートナーと裏で結託して、外国人の権利を奪う
不利な契約書をあえて作成して、後で依頼者を追い出す
こうしたトラブルは、特に“紹介なしで初対面の弁護士に依頼した場合”に起こりやすいです。
弁護士資格を持っていても、実際の対応や倫理観はピンキリであり、「弁護士だから安心」という思い込みは通用しません。
現地でビジネスをしている信頼できる日本人・外国人からの紹介で探す
これが最も安全かつ確実です。
過去に外国人クライアントの事例を持っているか確認する
“日本人対応実績あり”というだけでも安心感が違います。
初回の打ち合わせで「料金体系・対応範囲・納期」を明確に文書化してもらう
うやむやな口約束や「あとでまとめて請求します」という弁護士は避けるべきです。
複数名に相談し、対応の誠実さ・知識量を比較する
「一番最初に出会った弁護士=運命の人」ではありません。
信頼できる弁護士は、金額よりも長期的な関係と信用を大事にし、透明性のある説明と対応をしてくれます。一方、短期的な利益を追求するタイプは、必ずどこかで“胡散臭さ”が見えてくるものです。
起業初期は特に不安も多く、誰かに頼りたくなる気持ちも強まりますが、焦って弁護士を決めることが最大のリスクです。慎重すぎるくらいでちょうどいい――それがフィリピンにおける“弁護士選びの鉄則”です。
フィリピンでは、「契約で決めたことがすべて」です。口頭の約束や“阿吽の呼吸”は一切通じません。信頼関係の前に、まず法的な枠組みを整えることが、フィリピンでのビジネス成功に欠かせないステップです。
名義人との契約は必ず書面化+公証
弁護士とは顧問契約またはスポット契約を検討
起業後も定期的にリーガルチェックを行う体制を
フィリピンは、英語が通じる稀有なASEAN諸国のひとつであり、若年層人口の多さや経済成長の勢い、外資誘致政策などを背景に、今まさに「起業先」として世界から注目されています。
一方で、実際に外国人としてフィリピンで事業を立ち上げるには、日本とはまったく異なる制度・文化・慣習の壁が存在し、“勢いだけ”では乗り切れないのが現実です。
そのなかで成功する人と失敗する人の分かれ道――それが「準備力」です。
外国人出資の上限、ネガティブリスト、最低資本金の基準、PEZA制度、ビザの要件…
これらはすべて、“知らなかった”では済まされない基礎知識です。日本では考えられないような規制や手続きがある一方で、知っていれば合法的に外資100%で会社を持てる抜け道もあるのがフィリピンの面白いところでもあります。
つまり、法制度を理解すること自体がビジネス戦略の一部です。
法人を設立しても、代表者本人が滞在できなければ話になりません。
13A(配偶者)・9G(就労)・SRRV(退職者)・観光ビザ延長など、**どのビザが自分の事業・家族構成・資金力に合っているのか?**を見極めることは、事業運営の安定性に直結します。
特に9Gビザは法人と連動するため、法人登記と並行して手続きを進めるタイミングも極めて重要です。
フィリピンでは、名義人との関係性ひとつで全てが決まる――と言っても過言ではありません。
どんなに優れたビジネスモデルがあっても、名義人に裏切られたり、弁護士に騙されたりすれば、すべてが水の泡になります。
だからこそ、「契約書を整えること」と「信頼できる専門家を味方にすること」は最優先課題です。紹介ベースでしか見つからないような実力派の弁護士を確保できれば、それだけで起業成功の可能性が何倍にも跳ね上がります。
フィリピンでは、営業許可(Mayor’s Permit)やBIR登録、社会保険(SSS・PhilHealth・Pag-IBIG)など、起業後もさまざまな行政手続きやルールへの対応が必要です。これらの作業を怠ると、**突然の営業停止や罰金、職員からの“非公式な圧力”**に繋がることも。
つまり、起業は「作って終わり」ではなく、「育て続けることができる体制」が求められます。
フィリピンでの起業は、日本や他の先進国と比べて資本が少なくても挑戦できる土壌があります。アイデアとスピードさえあれば、大きなチャンスを掴むことも可能です。
しかし一方で、法的な制限、文化的なギャップ、人間関係の複雑さ、役所対応の煩雑さなど、“甘く見ていた人”が撤退する例も後を絶ちません。
だからこそ、準備を徹底し、慎重に一歩ずつ進めること。
これが、フィリピンで起業を成功させるための唯一にして最大の秘訣です。
次回は、実際にフィリピンで起業した日本人や外国人が直面した「失敗事例とそこから得られる教訓」を具体的に紹介していきます。ぜひそちらも参考にしてください。