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~法人設立から納税・監査・制度の違いまで、2025年最新版~
フィリピンでの起業やビジネス展開を検討する際、「法人設立」や「ビザ取得」などに目が行きがちですが、実はそれ以上に重要なのが税金制度の理解と実務対応です。
なぜなら、税務署(BIR:Bureau of Internal Revenue)からの登録・報告・納税が適切に行われていない場合、営業停止・罰金・追徴課税など、ビジネスの根幹を揺るがすトラブルに直結するからです。
特に外国人起業家にとっては、以下のような問題に直面しやすいのが現実です:
「フィリピンではレシートを出さない業者が多いけど、それってOKなの?」
「VATとPercentage Taxって何が違うの?うちはどっち?」
「現金売上やチップは、帳簿にどう記載すればいい?」
「税務署から“監査”と言われたけど、どうすれば…?」
日本と制度が異なるだけでなく、実務レベルでの慣習も大きく異なるフィリピンでは、「知らなかった」「ついうっかり」が命取りになりかねません。さらに、帳簿や領収書の形式、提出時期、金額の処理方法なども日本とは大きく異なります。
本記事では、フィリピンで実際にビジネスをしている日本人・外国人オーナーに向けて、
フィリピンの主要な税制度の概要
法人設立後に必要なBIR登録と実務
日常の経理処理でやりがちなミスと注意点
税務調査の実情と備え方
日本との税制度の違いと節税の基本戦略
などを、「制度」と「現場」の両面からわかりやすく解説していきます。
海外起業を成功させるために必要なのは、“攻め”のマーケティングだけでなく、“守り”の税務管理です。
あなたのビジネスを守るために、ぜひこの税金ガイドを最後まで読んでください。
フィリピンでビジネスを始めると、多くの外国人起業家が「税金」に関して二つの極端な認識を持ちがちです。
一つは、「まだ売上も少ないし、税金なんて後で考えればいい」という軽視タイプ。
もう一つは、「どうせ現地では税金なんて“適当”にやってるものでしょ?」という油断タイプ。
しかし現実は、そのどちらでもありません。
むしろ税金に対する準備不足や誤解こそが、フィリピン起業における最大のリスクといっても過言ではないのです。
フィリピンでは、法人や事業主がBIR(国税庁)への登録・納税・帳簿管理・領収書発行などを怠った場合、非常に高い確率で以下のようなペナルティが課されます:
数万ペソ〜数十万ペソ規模の罰金(無申告・遅延)
過去に遡っての追徴課税(最大3年分)
営業停止命令(シール貼付による封鎖)
ビザや営業許可の更新不可
名義人や会計士とのトラブルによる責任押し付け合い
特に飲食業・教育業など現金商売・現地法人が前提の業種では、「ちゃんと税務をやっているか?」が営業継続の生命線になります。
かつては「現地ではみんな適当にやってるから大丈夫」という空気がありました。
確かに、すべてを申告している企業は多くはないかもしれません。
しかし2020年代以降、以下のような制度整備が進み、外国人オーナーや目立つビジネスほど監視の対象になりやすい状況になっています:
電子申告(eFPS)や電子領収書(eOR)の義務化
BIRによるPOSシステム導入の監査強化
社会保険(SSS等)とのデータ連携
フィリピン人従業員の内部告発事例の増加
つまり、「税金に無頓着な外国人オーナー」は、
狙いやすく、絞りやすい“ターゲット”になってしまうリスクを常に背負っているのです。
日本のように一律・厳格な制度と違い、フィリピンの税務はある程度の**“余白”**があります。
それは「抜け道がある」という意味ではなく、現地の税理士や会計士と相談しながら、合法的に“守りつつも得する”方法が存在するということです。
たとえば:
VAT登録を避けてPercentage Taxにする
SRRVや個人名義を活用した分散処理
キャッシュフロー上の納税時期調整
会計ソフトとレシート発行の連携による自動記録体制
など、「知らなければ損する制度」が多く存在しています。
フィリピンで長く続くビジネスにしたいなら、
**「税金を避ける」ではなく、「税金とうまく付き合う」**という意識が欠かせません。
このあとは、具体的な税の種類とその対策方法について、順を追って見ていきましょう。
〜所得税、VAT、Percentage Taxなど、起業家が知っておくべき基本税制〜
フィリピンでビジネスを行う場合、法人・個人を問わず、以下のような税金(タックス)が関係してきます。
日本とは制度や考え方が異なる点も多いため、ここでは最も関係が深い主要税6種類+その他の義務について、分かりやすく整理します。
法人・個人いずれにも課税される基本の税金。
フィリピン国内での純利益(収入−経費)に対して課税されます。
区分 | 税率 |
---|---|
法人税(一般企業) | 25%(2025年時点) |
個人事業主(個人所得税) | 年収に応じて5%〜35%の累進課税 |
毎年の**Annual Income Tax Return(BIR Form 1701 / 1702)**にて申告
**前払い(Quarterly)**で納税が求められるため、キャッシュフロー計画が重要
✅ ポイント:
赤字でも「Minimum Corporate Income Tax(MCIT)」が課される場合があるので注意(売上の2%)。
売上や仕入れに対してかかる消費税に似た税金で、企業の規模によって適用が義務化されます。
基本税率:12%
年間売上が3,000,000ペソ以上の企業はVAT登録が義務(VAT-Registered Entity)
VAT登録事業者は「VAT Official Receipt/Invoice」を発行しなければならない
仕入れ時に支払ったVAT分は「控除対象」となる
✅ ポイント:
VAT事業者になると帳簿と領収書の管理が厳格になるが、大きな取引先との契約では必須条件になることも。
年間売上が3,000,000ペソ未満の事業者向けに用意された簡易版の税制。
VATに比べて計算も書類もシンプル。
税率:売上の3%(2025年現在)
VATに登録していない小規模事業者のみが選択可能
仕入れにかかる税の控除はできない
✅ ポイント:
売上が増えて3Mペソを超えたら自動的にVATへ切り替わるため、成長に応じた制度移行計画も必要。
人件費や家賃、フリーランス支払いなどに関して、支払い時点で一定額を“差し引いて”納税する制度。
給与(Compensation):5%〜35%(給与水準に応じて)
家賃(Rental):5%
プロフェッショナルフィー(弁護士・会計士等):10%〜15%
✅ ポイント:
事業者が**「徴収・納税の代行者」としての責任**を負うため、忘れているとBIRからペナルティ対象に。
契約書や証券類に課される印紙税のようなもの。
銀行ローン契約書、株式譲渡契約書などに発生
額面に応じて税率が異なる(例:借入金に対して0.75%)
✅ ポイント:
特に会社設立時や株主変更時などに発生するので、弁護士や会計士と相談しながら処理を進める。
市町村ごとに課されるローカル課税で、営業許可を維持するために必要。
毎年1月に更新(Mayor’s Permitの一部)
売上に応じた税率(0.5%〜3%が一般的)
市役所にて手続き・支払い
✅ ポイント:
BIRとは別の管轄(市)で発生する税金。市役所とBIRの両方で管理されていることを忘れずに。
毎年1月にBIRへ支払う固定費(BIR Form 0605で処理)
納税しないと帳簿やORが無効扱いになる恐れあり
税制は一見複雑に見えますが、実際の事業規模や形態に応じて関係する税金は絞られます。
逆に、「自分には関係ないと思っていた税金」が突然課税対象になることもあるため、常に最新情報と専門家のサポートが重要です。
〜TIN取得・領収書の印刷許可・帳簿登録まで、最初にやるべき税務手続き〜
フィリピンで会社を登記した後、**実際に営業を始めるために必須となるのが「BIR登録」**です。
「まだ利益も出ていないから税務は後回しでいい」と考えるのは危険。税務上の義務は、法人が登記されたその日から発生します。
BIRは、フィリピンの国税庁にあたる政府機関で、主に以下のような業務を担っています:
納税者登録(TINの付与)
帳簿とレシート(Official Receipt)の管理と許可
納税義務の監査・徴収
税金に関する法令の運用と指導
法人も個人事業主も、ビジネスを行うすべての人がBIRに登録する義務があります。
以下が、法人設立直後に必要な主要手続きです。
法人が納税するための「企業版マイナンバー」のようなもの。
SEC(法人登記)完了後、BIRでTINを取得します。
✅ 必要書類例:
SEC登録証明書(Certificate of Incorporation)
定款(Articles of Incorporation)
代表者のIDコピー
賃貸契約書(オフィスの所在地証明)
「領収書や請求書を印刷していいですよ」というBIRの許可がATPです。
BIR指定の印刷業者でしか、正式なOfficial Receipt(OR)を作れません。
✅ ポイント:
ATPがないと**“無効な領収書”**となり、経費処理・納税に使えません
印刷に10〜20営業日かかるため、早めの申請が必要
全ての法人は、「帳簿」をBIRに登録しなければなりません。
帳簿の種類:
General Journal(仕訳帳)
General Ledger(総勘定元帳)
Cash Receipts Book(現金収入帳)
Cash Disbursement Book(現金支出帳)
✅ 方法は2つ:
手書き帳簿(BIR指定ノートを使用)
Loose-leafまたはComputerized(電子帳簿)※事前申請が必要
売上規模に応じて、どちらかを選択する必要があります(ステップ1で説明済)。
VAT登録(年間売上3Mペソ以上):VAT付きORの発行が義務
Percentage Tax(年間売上3Mペソ未満):3%の簡易課税
✅ 登録しないと売上計上できない/仕入控除できないといった支障が出る
すべての上記登録が完了すると、**BIR Form 2303(Certificate of Registration)**が発行されます。
これは「正式な納税者」としての証明書であり、銀行口座開設やビジネス契約の際にも提示が求められます。
項目 | 提出頻度 | フォーム番号 | 備考 |
---|---|---|---|
Percentage Tax or VAT | 毎月 or 四半期 | 2551Q / 2550M | 月次か四半期かは事業内容による |
Withholding Tax | 月次 or 四半期 | 1601EQ / 0619E | 給与・外注費の支払いがある場合 |
Income Tax | 四半期 & 年次 | 1702Q / 1702RT | 毎年4月15日が年次申告締切 |
Annual Registration Fee | 年1回 | 0605 | 毎年1月末までに500ペソ |
OR未発行 → 罰金最大25,000ペソ+営業停止命令
書類不備 → Audit対象として数年遡って調査
納税遅延 → 延滞利息+罰金(年間12%以上相当)
また、「BIR職員が突然店舗に来る」ことも日常的です。帳簿・レシート・登録証をいつでも提示できるよう整備しておく必要があります。
フィリピンの税制度は煩雑に見えますが、最初の数ヶ月で正しい体制と専門家をパートナーに選ぶことができれば、継続的なリスクとコストを大きく減らすことが可能です。
登録はすべて期限内に処理する
OR・帳簿・帳票は常に最新に保つ
現地の会計士・税理士とは密な連携を取る
この3つを意識するだけでも、トラブルの9割は未然に防げます。
〜“少額だから大丈夫”が命取りになる。海外経理こそ仕組みで管理〜
フィリピンで法人を設立し、BIR登録も完了。
営業許可も取れて、売上も出始めた――
ここで気が緩む起業家は少なくありません。
しかし、日々の売上・経費の処理や帳簿管理を甘く見ていたがために、後からBIR監査で大打撃を受けるケースが非常に多いのが現実です。
よくあるミス | 何が問題? |
---|---|
OR(Official Receipt)を出さずに現金だけ受け取る | 領収書未発行はBIR違反。罰金+営業停止の対象 |
経費の領収書をもらっていない/もらったけど保管していない | 経費として認められず、利益=課税額が増加 |
小口現金(ペティキャッシュ)の使途が曖昧 | 後で説明できず、私的流用と見なされる恐れ |
マネージャー任せで帳簿を見ていない | 売上隠しや経費の不正使用に気づけない |
会計ソフトを導入していない/現金管理が手書き | 数ヶ月後に金額不一致が発覚し、修正不能に |
フィリピンでは、収入はすべて「OR(公式領収書)」によって証明されなければならないという前提があります。
いわゆるレジ打ちやPOSのレシートではなく、BIRが認可したORでなければ、売上として認められません。
✅ ORが発行されていないと…
売上を隠していると見なされる
後から売上修正ができず、監査で追徴課税
VAT処理やPercentage Tax申告も狂ってくる
「忙しいから今日はORなしで」といった判断は、“営業許可の一時停止”という形でブーメランになって返ってきます。
日々の売上・経費を「現場マネージャーに任せっきり」になっていると、以下のような問題が起きやすくなります:
売上とレジ金が合わない
「今日は売上少なかった」と虚偽報告
経費の水増しや二重請求
✅ 解決策:
売上管理シートと帳簿の毎日照合
監査機能のあるクラウドPOS導入
週次・月次で経理担当 or 外部会計士と確認会議
フィリピンでは、帳簿・領収書・請求書・給与台帳などの関連書類を最低10年間保管する義務があります。
書類 | 保管義務 |
---|---|
Books of Accounts | 10年 |
Official Receipts | 10年 |
Tax Returns(確定申告書) | 10年 |
✅ 電子データ保存もOKですが、BIRから紙媒体の提出を求められるケースもあるため、月単位でのプリント&ファイリング管理が無難です。
レストランなどでは、以下のように売上源が複数ある場合もあります:
店内飲食(VAT対象)
デリバリー(VAT対象 or 免税対象)
イベント収入(特別契約書あり)
商品販売(棚卸し対象)
このような場合、帳簿とORも売上カテゴリごとに管理を分けることが望ましいです。
BIRの監査で「すべて一緒にしている」と指摘されることも多いため、最初から分けて記録する癖をつけておくと安心です。
ORは100%発行する
現金管理は「信用」でなく「チェック体制」で守る
帳簿・領収書は定期的に見直して保管
すべての処理は「第三者に説明できる状態」にしておく
フィリピンでは「経理が甘い外国人経営者」は狙われやすい――それが現実です。
経理は苦手でも構いません。大切なのは「仕組みで守る姿勢」を最初に持てるかどうかです。
〜税務署は本当に突然やってくる。備えなければ“追徴・営業停止”も〜
フィリピンでビジネスを行っていると、ある日突然、税務署(BIR)から書類が届いたり、職員が店舗を訪ねてきたりすることがあります。
それが “Audit Notice(監査通知)” です。
日本と違って、フィリピンの監査は事前に説明や相談があるとは限らず、予告なしに始まることも珍しくありません。
税務監査とは、過去の税務申告内容に対し、正しく申告・納税されていたかをチェックする制度です。
対象期間は過去3年分が基本
売上、経費、領収書、帳簿、従業員情報など、すべての書類が調査対象
通常は郵送で「Letter of Authority(LOA)」という書面が届く
✅ フィリピンの監査の特徴:
“担当者の裁量”が大きい
正式な書類がない非公式なやり取りが発生しやすい
公務員でありながら“交渉”の余地があるケースも多い
BIRの調査は、以下のような事業・法人が狙われやすい傾向があります:
外国人が経営している店舗
キャッシュ商売(飲食・サロン・教育など)
申告金額と実態(POSやSNS集客)に乖離がある
雇用している従業員の社会保険登録が少ない
領収書の発行が少ない or 不備がある
✅ 補足:
POSやGrabFood、Facebookなどから売上状況を把握されることもあり、「ネットで見てるより売上低くない?」という指摘もリアルにある話です。
指摘内容 | よくある原因 | 想定されるペナルティ |
---|---|---|
売上の過少申告 | OR未発行、手書き帳簿のズレ | 3年分の追徴課税+利息・罰金 |
経費の過大計上 | 領収書の不備、不適切な費目 | 経費否認 → 所得税再計算 |
未登録スタッフの存在 | SSSやPhilHealth未登録 | 雇用主責任で罰金・登録指示 |
レンタル契約書の不備 | 税務書類との住所不一致 | 書類修正 or 修正指示、信頼性低下 |
OR、帳簿、VAT/Percentage申告書(2550/2551Q)、源泉徴収(1601EQ)
月ごとにファイルしておけばそのまま提出できる
特に経費として落とす場合、「誰のための何か」がないと否認されやすい
監査開始時は、まずは専門家を通して応対するのがベスト
無理にその場で返答・提出すると、齟齬が生じやすい
実はフィリピンの税務監査は、“完全な敵”ではありません。
ポイントは:
丁寧に応じる(敵対せず、記録に残す)
「間違っていたら修正して払う姿勢」を見せる
担当官との会話・やり取りもすべて記録・文書化する
下手にごまかそうとするより、**「自分たちは真面目にやってる」という“証拠の蓄積”**をしておく方が、長期的に大きなリスクヘッジになります。
税務監査とは、「3年前の自分の経理処理」との対話です。
あなたが当時の帳簿とレシートをきちんと管理していれば、堂々と対応できます。
「小さなミスが命取りになる」
「だから毎月の管理が重要」
「だからこそ外部パートナーが必要」
そう考えれば、税金はあなたのビジネスを支える“防御力”にもなります。
〜「え、これダメなの?」が後から高くつく。思考と制度のズレに要注意〜
フィリピンでビジネスを立ち上げる日本人オーナーが、税務関連でトラブルに遭う原因の多くは、**「日本との常識の違いを理解していないこと」**です。
ここでは、実際に多くの日本人が見落としてしまう“税務の落とし穴”と、その背景にあるギャップを紹介します。
日本では、「請求ベース」での売上計上が主流です(発生主義)。
一方フィリピンでは、“Official Receipt(OR)を発行した時点”で売上として認識されます(現金主義的発想)。
視点 | 日本 | フィリピン |
---|---|---|
売上の起点 | サービス提供 or 請求 | OR発行 or 入金 |
領収書 | 任意 or 客が求めた場合 | 法的義務(発行しなければ罰則) |
✅ つまり:ORを発行しない=売上を隠したと見なされるリスクあり
日本では「レシートがある」「業務に必要」と説明できれば経費として認められることが多いですが、フィリピンでは以下の条件が揃っていないと経費否認されることがあります:
BIR登録業者からの領収書であること(VAT/TIN記載)
相手の名前・住所・TINが明記されていること
領収書が正式な印刷業者によって発行されていること
✅ 要注意:ショッピングモールや小規模店のレシートは税務上“無効”扱いされることも
日本では税金の支払いが多少遅れても、督促や分割支払いの相談が可能なケースが多いです。
しかしフィリピンでは、納税期限を過ぎた時点で自動的に利息+罰金が発生します。さらに:
BIRからの通知なしに銀行口座が一時凍結される例もある
一部の許認可(Mayor’s Permitやビザ更新など)にも悪影響
✅ 結果として、「500ペソの税金が、半年後には数千ペソの請求になる」ことも
日本の会計士は国家資格であり、高い倫理観を持つのが前提です。
一方フィリピンでは、資格はあっても実務能力や責任感にバラつきがあるため、「任せっきり」は危険です。
✅ よくあるトラブル:
税金を預けたのに納税されていなかった
フォームが期限内に出されておらず、罰金が発生
顧問契約の範囲が曖昧で、対応外なのに相談していた
👉 定期的に明細・納税記録を自分でチェックする習慣が必要
日本では給与から自動的に社会保険や源泉税を差し引き、まとめて納税する仕組みが整っていますが、フィリピンでは企業が“それぞれの機関”に毎月報告・納税する必要があります:
SSS(年金)
PhilHealth(医療保険)
Pag-IBIG(住宅ファンド)
Withholding Tax(給与源泉税)
✅ 各機関に対し、月ごとの支払い+報告書作成が必要
✅ 申告忘れ・未納があれば、罰金+監査対象になる
「日本ではこうだったのに…」と思ったときこそ、制度の違いを“正面から理解し、順応する姿勢”が問われる瞬間です。
会計・税務は、国によってルールもリスクも違う
知らなかったでは済まされないのが、起業の世界
だからこそ、現地のプロとの連携+自分での理解が必要不可欠
〜「知らなかった」では済まされない、現地特有のミスを回避せよ〜
フィリピンで起業する外国人にとって、最初の1年目は**「知らなかったことによる税務トラブル」の温床です。
ここでは、特に日本人オーナーが陥りがちな代表的な5つの失敗例**を紹介し、その回避方法も併せて解説します。
📌 ケース:
「最初は試運転だから」「常連さんだし要らないでしょ」と、Official Receipt(OR)を発行せずに営業を続けていた。
🚨 問題点:
BIRにとって**「OR=売上の証拠」**。発行しなければ、売上を隠したと見なされます。
✅ 回避策:
ATP(Authority to Print)取得後は、すべての取引でOR発行を徹底
POSとORの照合ができる体制を構築(領収書未発行の習慣はゼロに)
📌 ケース:
経費のレシートをまとめて保管せず、後から「どこ行ったっけ?」状態に。
🚨 問題点:
BIRの監査では、「領収書があるかどうか」が経費計上の絶対条件。
レシートがなければ経費はゼロ扱いになります。
✅ 回避策:
月ごとに「OR(売上)」「Official Receipt(経費)」を仕分けして保管
経費メモ(用途・相手・日付)を記載し、PDFスキャン保存も習慣化
📌 ケース:
「専門家に任せてるから大丈夫」と安心し、税務書類や納税状況を一切確認しなかった。
🚨 問題点:
**“提出されていると思っていた申告が実はされていなかった”**という事例は多数。
BIRは「本人責任」の立場なので、業者のミスでもオーナーにペナルティ。
✅ 回避策:
会計士・税理士とは**「毎月の提出報告+納税証明書」を必ず共有**
最低限、支払った税金とフォーム番号は自分でも把握しておく
📌 ケース:
売上が300万ペソを超えても、Percentage Tax(3%)での申告を続けてしまった。
🚨 問題点:
売上3Mペソを超えた時点でVAT登録が法的義務になります。未登録だと、脱税扱いで過去分を追徴される可能性も。
✅ 回避策:
売上が月25万ペソ(年換算で3M)を超え始めたら、VAT移行を税理士と相談
VAT登録にはBIRへの別途申請が必要なので、早めに着手
📌 ケース:
法人設立後、BIRへの年間登録料(500ペソ)を支払うのを忘れていた。
🚨 問題点:
毎年1月末までの義務。たった500ペソでも“納税義務違反”となり、ペナルティ+罰金が発生。
しかも、これを放置していると帳簿やORも“無効”とされるリスクあり。
✅ 回避策:
年始に会計士と「税務カレンダー」を作成
Annual Registration(BIR Form 0605)は1月第1週で済ませる習慣をつける
フィリピンでビジネスを立ち上げることは、外国人起業家にとって非常に魅力的なチャンスをもたらします。しかし同時に、税制度の複雑さ・馴染みのなさ・そして油断が命取りになる現実も忘れてはなりません。
多くの先進国とは違い、フィリピンにおける税金は単なる書類作業ではなく、以下のような事業の根幹に直結します:
営業許可の更新
ビザや在留資格の維持
行政や取引先との信用
経営の継続性と財務の安定
外国人起業家が知っておくべき、重要なポイントを以下にまとめます。
税金は「あとで考えるもの」ではありません。法人設立の瞬間から、法律上・財務上の義務は始まっています。
VAT、源泉税、登録期限、領収書発行などは“余裕があればやる”ことではなく、ビジネスの生命線です。
OR(公式領収書)の未発行や、たった500ペソの申告忘れ、VATへの切替の遅れなど…。ほとんどの罰金は些細な誤解や見落としから始まります。
しかしBIRの視点では、無知は言い訳になりません。
税務監査は、過去2〜3年前のミスに対して突然やってきます。帳簿や記録が不完全であれば、追徴課税+利息+罰金を支払うことに。
今日の管理こそが、数年後の自分を守ります。
会計士・税理士・弁護士は有益な存在ですが、完全に任せきることはできません。
定期的に申告書の控え、納税証明、提出期限を自ら確認する習慣が必要です。
信頼することと、チェックすることは両立できます。
フィリピンでは、法の運用と実態が曖昧になりやすい環境です。
だからこそ、「税務を真面目にやっている外国人」はそれだけで他と差別化され、信用を得る存在になります。
顧客、オーナー、銀行、行政などすべてにおいて、信頼を築く要素です。
「賢い起業家は、税金を避けようとしない。うまく管理する。」
適正な税金を支払い、期限通りに申告し、記録を整えること。
それは負担ではなく、持続可能なビジネスのインフラであり、フィリピンにおいては不確実性から自分を守る盾になります。
もしあなたが“長く続くビジネス”を築きたいと願うなら、
まずはコンプライアンス(法令順守)から始め、戦略を練り、誠実に成長することが最善の道です。